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事務には個性なんていらないんだよ、と言われた話

2020/09.18

皆さん、こんにちは!

元事務のライター、山田です。

 

実は私、事務をしていたころ、上司からこんなことを言われました。

 

「事務には個性なんていらないんだよ。」

 

当時私がいた会社は事務として採用されていたのが私一人だったため、総務として、秘書として、そして営業アシスタントとしての役割を求められていました。

そのため、営業の方の企画書作成の手伝いも私の仕事として組み込まれていました。

その日も企画書の作成のアシスタントを指示されていた私は、営業の方から依頼された内容にプラスアルファした方が見栄えが良いのでは、と考え、担当の営業の方にその旨をお話したのです。

 

「ここ数字を入れた方がわかりやすいですよね?

あと、色も対比を考えて・・・」

 

そんなとき、その様子を見ていた上司からあの台詞が投げかけられたのです。

 

「言われた通り作ればいいんだよ。

大体、事務に個性なんていらないんだよ」と。

 

あのときはとにかく驚いて、「出過ぎたことを言ってすみません」と引っ込むしかなかったのですが、あれから十年以上経った今、ふと思うのです。

 

事務に個性は本当にいらないのか?と。

 

というわけで、本日はちょっと苦いこの思い出を振り返りつつ、事務の個性について考えてみたいと思います。

 

 

1.そもそも個性とはなんなのか

 

令和の今、個性の時代ともいうべき現在、個性的であることはむしろ勲章だと思います。

実際、自分の個性を惜しみなく発揮して成功している方も大勢いますよね。

 

そんな今では当たり前の個性ですが、そもそも個性ってどういうものなのか。

調べてみました。

 

個性とは。

個人または個体・個物に備わった、そのもの特有の性質。個人性。パーソナリティー。

引用:コトバンク デジタル大辞泉より

 

ようするに、その人がその人である理由となるもの、それが個性ということですね。

 

だとしたら、個性はみんな持っていて当然なので、会社で働く一人ひとりにも個性は最初から備わっていると考えられます。

 

けれど、今回問題となっているのは「事務に」個性が必要かどうか、という点です。

それには事務に求められているものがなんなのかを考える必要があります。

 

2.事務に求められているものって?

 

この問題の難しいところは、「事務」とひとくくりに言えるほど事務の仕事は単純ではない、というところです。

 

そもそも、総務事務、一般事務、営業事務、医療事務、貿易事務、法律事務・・・といったように、事務には多様な事務の形がありますからね。

 

ただ、これらの事務すべてに共通している点があるとすれば、それは、

 

・決められたことに対して迅速に、かつ正確にこなせる能力が必要

 

である点です。

 

だとしたら、その能力さえ備わっていれば個性なんていらない、ということになってしまうのでは・・・と不安になります。

 

しかし、同時にもう一つ、事務には欠かせない以下の技能があります。

 

・複数の部署を連結する技能

 

営業にせよ、企画にせよ、はたまた製造にせよ、事務処理なくして成り立っている部署は一つとしてありません。どの部署だって稟議書や報告書の作成はつきものですし、それら書類の確認にも事務が携わっているわけですから。

 

そしてそれらの仕事を通し、事務は複数の部署を繋げています。

他部署からの連絡を事務経由で受け、そこから作業が開始する場面も少なくないはずです。

 

そう考えたとき、事務は他部署を繋げるために「臨機応変さ」も持ち合わせていなければならないということになります。

部署ごとに規則や考え方が違ったり、その部署に即した時間帯での報告が必須だったり、とそのときどきにマッチした動きが求められますからね。

 

とはいえ、臨機応変とはいきなり身に付くものでもありません。臨機応変な対応をするためには、絶対に必要なものがあります。

 

それは経験です。

 

「今A商事から電話がかかってきた。つまり、この後、A商事宛の請求書の依頼が来るからA商事優先に作業進めなきゃ。」

 

というような経験値によって作業効率が変わってくるからです。

 

けれど経験とは人それぞれ。正直すべての事務が同じだけの分量を持ち合わせているわけでは到底ありません。

 

AさんとBさん、同程度の技術スペックだったとしても、片方がその仕事に対して実務経験があって片方が未経験であれば、当然経験のある人の方が作業スピードは勝りますからね。

 

個性が他者との違いを表すものである以上、二人の間にそれだけの差を生む「経験」というものもまた「個性」といえるのではないでしょうか。

 

3.事務の個性の出し方

 

と、ここまで事務にだって個性は必要、と話をさせていただきましたが、過去の私を振り返り、失敗したかな、と思う部分があります。

 

「伝え方があまりにも自分本位だった」という部分です。

 

企画書を見て「この方がいいと思います」と伝えることに問題があったとは思いません。

しかし、営業の方からの指示にはもしかしたらなんらかの意図があったのかもしれなかったのにそれを確認せず、

 

「ここは数字を入れた方が」

「色合いは変えた方が」

 

など、自分の提案したいことばかりを前面に押し出して伝えてしまったのです。そう言われた営業の方がどう思うのかを深く考えもせずに。

 

もちろん現代において、上下関係ばかりを重んじて言うべきことを言わない、なんていうのはナンセンスだと思います。

 

けれど事務は一定の指示のもと作業を行うことが多いポジションでもあります。

 

与えられた指示にどんな意味があるのか、それを確認しつつ作業を進めなかったのは私の落ち度だったといえるでしょう。

 

以上のことから、事務が個性を発揮するには以下が必要だと考えます。

 

・自分に求められているものがなんなのか、それを常に考えた上で行動する

・意見を発信する際は自分の立場、相手の立場に注意しつつ発信する

・自分の作業は完璧にこなしたうえで意見は発信する

 

また、自分の経験値を元に行動をしやすくするための手段として、私は以下も必要だと考えています。

 

・他の事務と差別化が図れるレベルの事務スキル

 

経験値が高くても作業効率が悪ければ、経験を活かした行動はしにくくなります。

とすれば、個性を発揮して仕事をしやすくするために、自分が実力のある事務であることを示す必要がありますよね。

 

その点においてスキルは目に見えやすく、差別化が図りやすいです。専門の資格を取得していればそれだけで口で言わなくても実力が伝わりますしね。

 

それに、そもそも個性とはその人がその人であると示すもの、とするなら、他者が持たない技術はそれだけで個性といえます。

 

実力を周りに示せなおかつ仕事の幅も広がるのであれば、技術力という個性はぜひ手に入れておきたいものですね!

 

4.終わりに

 

「事務に個性なんていらないんだよ。」

 

この一言は正直、やっぱり納得はいきません。

事務にだって個性はあって良い。むしろ個性のない事務は良い仕事なんてできない、と考えます。

 

しかし、個性の意味をはき違え、他者に不快感を与えてしまう言動はやはり問題だとも感じます。

 

とかく事務は多くの人と関わりやすい職種です。

だとしたら自分の発信したいことと、相手のほしいと思っているものとのバランスを見極める能力もまた、事務には必要なのではないでしょうか。

 

そう、人と人を繋ぐバランス能力。それもまた、事務を司る者が持っているべき個性なのかもしれません。

 

【ライター:山田ゆい】

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